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『ワールドダイスター』石見舞菜香(鳳ここな役)×長谷川育美(静香役)スペシャル対談

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演劇に情熱を燃やす少女たちの物語が描かれるTVアニメ『ワールドダイスター』。クライマックスとなった舞台『オペラ座の怪人』は、主人公・ここなと静香の演技に対する情熱と葛藤、そして二人の思いが交錯し、ドラマチックな結末となった。今回は終盤に描かれた『オペラ座の怪人』のエピソードを中心に、石見舞菜香(鳳ここな役)さんと長谷川育美(静香役)さんに、作品の舞台裏をうかがった。

「二人でワールドダイスター」という覚悟ができたから、自分の強い意思で静香ちゃんを迎えに行ったんです。(石見)

──第十場~第十二場で描かれた『オペラ座の怪人』は、ここなにも自分の演技が芽生えて、静香との演技の方向性が変わって行くという激動の展開でした。

石見ここなにとって、静香ちゃんは絶対的な存在でした。ここなは静香ちゃん以外にも、八恵ちゃんの言葉に甘えるなど、誰かの意見や言葉に流されてしまうタイプ。そこで自分の演技を主張できたのは、とても成長を感じました。でも、それは静香ちゃんにとって、「ここなはもう独り立ちできる」という意味でもあって……。

長谷川静香にとって、終盤はちょっと悲しい展開でした。私自身も静香の結末をお聞きしていたわけではなく、第十一場のアフレコが終了した時点で「来週はお休み⁉」と思っていたんです。

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──静香も演劇が本当に大好きで、「舞台に立ちたい」という気持ちに気付かされた展開も切なかったですね。

長谷川ここなの横にいる環境も辛いじゃないですか? 劇団にいれば、どんどん演劇をやりたい気持ちになるのは当然ですよね。静香もどこかで諦めていたはずなので、その気持ちを思うと辛かったです。

──第十一場の海のシーンで、静香が「役者として持っているべき感情をすべて返す」という展開は非常に白熱しました。

長谷川あのシーンは最後だからこそ、真正面からここなに気持ちをぶつけています。私自身、何度見てもグッとくるシーンです。熱さはあっても、根本的には冷静に対応している子なので、静香があそこまで感情を剥き出しにするのは珍しいです。

石見あのシーンは、静香ちゃんと一緒に収録できなかったんですよね。

長谷川そう、テストは一緒だったけど、(セリフが)被っちゃうから。あのシーンは舞菜香ちゃん泣いてたもんね。

石見アフレコ後に泣きました。その後、頭ぶつけました。

長谷川(笑)。

石見あのシーンは、単純に静香ちゃんに「消えないでほしい」という気持ちがある一方で、ここなが再び生まれ変わった瞬間もあると感じました。喪失であり、 産声のようなものでもあり、色々な気持ちが交錯して収録後に泣いてしまいました。やっぱり全話数通して印象深かったのは、第十一場の海のシーンです。

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──静香が提案した怒りのファントムと、ここな自身が提案した夢見がちなファントムを融合させて、 オーディションを勝ち抜くという展開は熱いものがこみ上げてきました。

石見実際に静香ちゃんの演技に合わせながら、彼女と融合して1人の人間になったように演じました。静香ちゃんは覚悟を決めて消えてしまったわけですから、それに応えるために、ここなは全力でファントムを演じきったのではないかと思います。

──シャモから「ダイスターを目指す役者がこの先もそんな顔でいいの?」という言葉を投げかけられて、「静香が消えたままでいいのだろうか?」という気持ちを視聴者も抱いたと思うんです。

石見そうですね。さっすーが「消えるためにあるセンスなんて、ナンセンスだ」と言っていましたけど、本当にそのとおりで……。静香ちゃんは、本来この世界にはいなかったはずの存在ですが、彼女自身も気持ちがありましたから、消えてしまうという選択は一層悲しい気持ちになります。「静香ちゃんと一緒に舞台に立てたらいいのに!」と私自身も願っていました。

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──だからこそ、「私たちの夢」に気付いたシーンは、重要な決断を意味していました。

石見幼いここなと対話するシーンは、ちょっと難しかったです。あまり自分のキャラクター同士でしゃべるシーンはありませんから。彼女は大事なことから目をそらしてしまうことが多かったので、こうして自分のことを深く考えるというシーンは大きな意味を持っていたと感じます。

──ここなは、最終的に静香を迎えに行くことを決断しました。「自分で迎えに行く」という意思を見せたのも、成長のように感じますね。

石見あのタイミングのここなじゃなかったら、 迎えに行く理由が違っていたでしょう。昔だったら「自信がないからそばいて欲しい」。でも今は、「一緒に舞台に立ちたい!」という能動的な理由でした。「二人でワールドダイスター」という覚悟ができたから、自分の強い意思で静香ちゃんを迎えに行ったんです。

長谷川戻ってきて、ぱんだが真っ先に抱き着いたのが印象的でした。前のここなだったら、多分普通に「静香ちゃん!」って抱き着いてたのに(笑)。

石見あのシーンは、ここなが自信満々な顔をして、静香ちゃんは「なんかいいのかな」みたいな顔をして、これまでの二人と真逆な雰囲気でした。ここなと静香ちゃんは、これで1人と1人になったのかなと感じました。補い合うだけじゃなくて、それぞれが1人。これからは共闘していくというイメージです。

長谷川静香は放送前から放送中も含めて、素性や背景を一切話せなかったので、とても異質なキャラクターと感じられたと思います。静香とここなの道筋を最後まで見届けていただいて、ようやくすっきりした気持ちになりました(笑)。

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『ワールドダイスター』の劇中劇は、とても丁寧に作られてますが、所作にしてもぬかりがありません。(長谷川)

──あらためて舞台を題材とした作品の難しさは、どんなところだと感じましたか?

石見演技が題材だからこそ、毎回自分の力不足を感じていて、「もっとできたらよかったのに」と反省ばかりでした。でも、それが演技の醍醐味なんです。演技って「できたから楽しい」ということではないと思うんです。自分に失望して考えて、「もっとなにかできないか?」と模索して……。年齢を重ねて、吸収して、成長していくもの。とにかく難しくて、たくさん悩みましたが、充実していたと感じます。

長谷川「完璧な演技ができた!」と思えたら、もうそこで終わりだもんね。

石見そうなんです。「いいね」と思ってくれる人もいれば、 「まだまだ」と思ってくれる人もいます。絶対に全員が「素晴らしい!」という演技は難しいかもしれません。でも、それが面白いんです。あらためて振り返ってみると、この作品のキャスト陣は、どこか追い込み気質の役者さんが多かった気がします(笑)。

長谷川静香は「ここなのお手本」である存在ですが、お手本を見せるシーンが多いわけではない点は、プレッシャーがありました。特にファントムのシーンは、間隔も空いていたこともありましたし……。ただ、劇中劇に関してはキャラクターを意識せずに、役柄に徹して良いということだったので、やりづらさはなかったです。

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──特にここなと静香は、男性役も多かったですね。

長谷川「アニメで男の子を演じる」というケースとは、まったく違いますからね。青年や高年齢の男性役は、普段のアニメで演じることは基本的にありません。そこはいかに男性らしさを出せるかを考えなければなりませんでした。男性が演じている場合と比べて違和感がないぐらい、自然に演じられなければいけなかったと思います。以前、宝塚歌劇団を見に行ったことがありますが、全員女性だということを忘れてしまうほど、まったく何の違和感もありませんでした。ですから劇団シリウスも、それぐらいの実力を持っていなければいけないと思えました。

石見「女の子ががんばっているなぁ」と思われてはいけないですもんね。

長谷川そうなんです。たとえば、さっすーも男性のかっこよさを見せているから、女性ファンに人気があるわけじゃないですか。劇中でも、男性的な所作をきっちり作っていますよね。『ワールドダイスター』の劇中劇は、とても丁寧に作られてますが、所作にしてもぬかりがありません。そういう細かいこだわりが、作品の凄さとして伝わっていると感じます。

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──劇中のここなと静香は、それぞれの性格について言い合うシーンがありますが、石見さんと長谷川さんはお互いについて、どんな印象をお持ちですか?

石見しっかりした先輩です。いつも周りをよく見ていて、的確に指摘される印象があります。たとえば、私に悲しいことが起きたとき、長谷川さんだけは何も言わず、ただ見守っていてくださるんです。

長谷川めちゃめちゃ悩みますけどね。でも、絶対大丈夫なわけがないから、「大丈夫?」と聞いたところで、どうにでもなるわけじゃない。だから、いつもと同じように挨拶するんです。

石見そうなんですよ。「大丈夫?」と声をかけていただけるのはうれしいのですが、そっとしておいてほしいときもあって……。そんなところに長谷川さんの思慮深さを感じて、「素晴らしいなぁ」と思います。ここなを演じるうえでも、静香ちゃんには心から憧れたいじゃないですか。お芝居もすごいと思いたいし、尊敬するような気持ちを持ちたい。だから長谷川さんが静香ちゃんで良かったと思います。

長谷川舞菜香ちゃんは、ギャップが素敵な子です。普段は、ふわふわしている印象が強くて、ファンのみなさんもそう感じているかもしれません。でも、天然な面白さがある一方、しっかりと考えのある子なんです。逆に私はしっかりしているように見られるのですが、そう見せているだけで。基本的に何も考えていないだけなんです(笑)。だから舞菜香ちゃんが、自分の考えをしっかりと持っているのは本当にすごいなと感じています。ふわっとした印象だけではない、しっかりとした部分も魅力的な方です。

──特にお気に入りのエピソードや、劇中劇のシーンについてお聞かせください。

石見『竹取物語』や『アラビアンナイト』もそれぞれの良さがありますが、もっとも印象に残っているのは『オペラ座の怪人』です。1つの舞台をほぼすべて描いたエピソードですし、映像も音楽も素晴らしかったです。最後のファントムのセリフが特に印象的で、「私は初めて生まれてきてよかったと思えたのだから……」というセリフが心に残っています。生まれて初めて「生まれて良かった」と思える人生って、想像するだけで壮絶じゃないですか。それがファントムの憎しみや苦しみに繋がっていたと思うのですが、ここなが演じるファントムには憧れとかの気持ちも混ざって、より切なく感じてしまって……。愛を知って、人並みの幸せを理解した瞬間に別れが来るという展開は、純粋に心に響きました。

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長谷川私も『オペラ座の怪人』です。静香自身は舞台に立っていませんが、ダークな男性役には興味があります。『アラビアンナイト』も印象的で、特に八恵ちゃんの生き生きとした少年らしい演技は魅力的でした。

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──もし劇団シリウスが新しい舞台に挑戦するとしたら、どんな作品が見てみたいですか?

石見『ピーターパン』です。『ピーターパン』にも諸説あるらしく、ダークな内容の『ピーターパン』が見てみたいです。

長谷川具体的な作品を上げるのは難しいのですが、シリウスの演劇は伝統的な作品が多いですよね。もう少し現代に近い世界観で、役者たちの世代らしさが出るような演劇も観てみたいです。逆に新鮮な印象を受けるのではないかと思います。

──2023年7月28日(金)からTVアニメ『ワールドダイスター』のBlu-rayシリーズ(全4巻)がリリースされますが、あらためて見どころをお聞かせください。

長谷川第一場から第十二場まで、ずっと面白い作品で、どの話数もぜひもう一度見返して欲しいと思っています。制作陣もキャスト陣も力を入れて作っている作品だからこそ、特典のオーディオコメンタリーで、作品の舞台裏も知って欲しいです。特に監督ご自身の言葉で作品のこだわりを聞けるのは、貴重な機会だと思います。新たに気付くこともたくさんあると思いますので、ぜひ何度でも見てほしいです。

石見全エピソードに何かしらの衝撃があり、心に響くものがあります。最終回の第十二場を見終わったあとに、また第一場に戻って見てみたら、 キャラクターの成長をもっと実感できると思います。本編以外にも浅草女子会といったバラエティ的な特典もありますので、豊富な特典も楽しんでください。ぜひよろしくお願いします。

PROFILE

石見舞菜香(いわみ まなか)
4月30日生まれ。埼玉県出身。出演作に『【推しの子】』黒川あかね役、『ウマ娘 プリティーダービー』ライスシャワー役など。

PROFILE

長谷川育美(はせがわ いくみ)
5月31日生まれ、栃木県出身。出演作に『私の推しは悪役令嬢。』レーネ=オルソー役、『ぼっち・ざ・ろっく!』喜多郁代役など。

 

<発売情報>

ワールドダイスター 1(特装限定版)
2023年7月28日発売
税込価格:¥9,900
品番:BCXA-1845

 

TVアニメ「ワールドダイスター」 公式サイト

TVアニメ「ワールドダイスター」 公式Twitter@world_dai_star

『ワールドダイスター 夢のステラリウム』(ユメステ) 公式Twitter@wds_game

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