【映画クレヨンしんちゃんなんでも図鑑】第28回「20世紀博」［しんちゃん通信］

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2023.12.19 UP

【映画クレヨンしんちゃんなんでも図鑑】第28回「20世紀博」［しんちゃん通信］

1993年に上映が始まった『映画クレヨンしんちゃん』は、今年30周年！これまでDVDでのみ発売されてきた旧作映画19作品のブルーレイ化プロジェクトが2022年12月から約1年間をかけてスタートし、最終月を迎えました。「映画クレヨンしんちゃんなんでも図鑑」第28回は、映画クレヨンしんちゃん第9作『映画クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶモーレツ！オトナ帝国の逆襲』（ブルーレイ好評発売中）から、「20世紀博」を紹介！
※紹介文には本編のネタバレを含みます。

【映画クレヨンしんちゃん第9作】
映画クレヨンしんちゃん嵐を呼ぶモーレツ！オトナ帝国の逆襲

20世紀博

「大人が観ても泣ける」という『映画クレヨンしんちゃん』の評価を一躍高めた金字塔的作品、原恵一監督による『モーレツ！オトナ帝国の逆襲』は、巨大な「太陽の塔」から始まる。1970年に開催された日本万国博覧会の象徴的なモニュメントだ。

万博会場を見物する、しんのすけ、みさえ、ひまわり。そこへ突如として巨大怪獣が襲来する。すると、野原一家はあっという間に万博防衛隊に早変わり。万博会場を破壊する怪獣に苦戦するしんのすけたちの危機を助けるべく、巨大ヒーロー・ひろしSUNが登場！

……というのは、すべて春日部に建設された巨大なテーマパーク「20世紀博」のアトラクションだった。懐かしの特撮ヒーローになりきって撮影してくれるというもの。ひろしの次はみさえが魔法少女に変身する番だった。ヒーローやヒロインになれるスタジオのほか、20世紀のあらゆるものを販売するショップ、懐かしい遊びを心ゆくまで楽しめる広場、懐かしい給食が味わえるレストランなどが併設されている「お客様がお客様自身のあらゆる思い出と出会える場」だ。多くの大人たちが子どもそっちのけで「20世紀博」に夢中になっていき、その影響は日本中に波及しつつあった。

「20世紀博」とは、現実の21世紀を捨てて20世紀への逆戻りを企む組織「イエスタデイ・ワンスモア」が作り上げたものだった。「20世紀博」の内部には、昭和の下町を模した「夕日町銀座商店街」が建設され、すでに多くの人々が生活していた。取り残されたしんのすけたちは、大人たちを奪還して未来を取り戻すための戦いを始める。

原恵一監督は、当初「万博を取り上げる」ということだけを決めて、画コンテを描き始めたという。原監督自身、小学5年生のときに訪れており、万博には思い入れがあった。万博のシーンについては、現場の若いスタッフから「なんでこんな描写を丁寧にやるんですか？」と言われたそうだが、原監督は「やりたいからやるんだよ！」と言い返したとトークイベントなどで明かしている。

なお、「20世紀博」の描写に関しては、元になっているテレビシリーズのエピソードがある。「母ちゃんと父ちゃんの過去だゾ1」（1999年9月10日放送）というタイトルで、野原一家とみさえの友人の本田ケイ子一家が春日部にできた「なつかし博物館」を訪れるというもの。ひろしの先導で「昭和40年代」コーナーに入ると、天地真理のヒット曲「恋する夏の日」が流れる昭和の街並みが広がっている展開が『オトナ帝国の逆襲』とよく似ている。バーの入口に貼られている藤圭子のポスターを見てひろしがしんのすけに「宇多田ヒカルの母ちゃんだぞ」と教えたり、ひろしが70年代の人気番組『紅白歌のベストテン』の思い出を熱弁して周囲に引かれたりしていた。

ひろしのテンションが一番上がるのは、もちろん「エキスポランド」という名の大阪万博コーナー。ミニチュアを前に涙を流し、「ビバ万博！　人類の進歩と調和！」と叫んでまわりから冷たい目で見られてしまう。みさえは万博にまったく興味を示さず、「昭和50年代」コーナーでケイ子と一緒にピンク・レディーの「UFO」を歌い踊る。ひろしとみさえの世代差がくっきり表現されているのが興味深い。

このエピソードを作ったものの、原監督の中で「万博を描きたい」という欲が収まることはなく、『オトナ帝国の逆襲』の「20世紀博」の描写につながったのだという。

余談だが「母ちゃんと父ちゃんの過去だゾ2」は、独身時代のみさえの部屋でひろしとみさえの父・よし治が鉢合わせてしまうという昭和のホームドラマのようなエピソード、「母ちゃんと父ちゃんの過去だゾ3」は結婚話がこじれたひろし一家とみさえ一家がみんなでアニメの『クレヨンしんちゃん』を見て、なんとなくムードが良くなるというメタなエピソードだった。