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「Spirit of Wonder Blu-ray BOX」発売記念 原作・鶴田謙二インタビュー

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日本で最も権威あるSF文学賞「日本SF大会星雲賞」のアート部門を2000年(第31回)、2001年(第32回)、2013年(第44回)、2023年(第54回)の4回受賞した漫画家・鶴田謙二原作のアニメーション『Spirit of Wonder』。本作をアニメ化した全5作品が初のBlu-ray化! 「Spirit of Wonder Blu-ray BOX」として、3月27日発売となる。発売を記念して、鶴田謙二へのインタビューが実現! インタビューでは、『Spirit of Wonder』アニメ化の企画について聞いた時のお話や、幼少期の漫画家を志す経緯やSFに興味を持ったきっかけ、デビュー作『広くてすてきな宇宙じゃないか』についてなど、多岐に渡ってお話を伺った。

SFとの出会い

──SFに興味を持たれたきっかけは何でしょう?

鶴田僕らの世代は娯楽が少なく、皆もが同じ作品を観て育ったんですよ。だから明確に「きっかけ」と言えませんが、『帰ってきたウルトラマン』と『宇宙戦艦ヤマト』が好きでした。『帰ってきた~』は傑作群と呼ばれる後半のエピソードが特に好きです。あと大人向けSFで初めて読んだのは『日本沈没』で、小説から映画とドラマ、漫画版も読みました。ただ中学生になってからは自分で漫画を描くようになり、次第に漫画もテレビも見なくなりました。漫画を読むよりも描く方が楽しくなったんですよ。ストーリーは主に友達が考え、僕はひたすら絵を描いていました。B5サイズのノートを三冊くらい貼り合わせた漫画用ノートを作り、『サイボーグ009』に影響を受けた漫画を描いてました。

──自分で描こうと思われたきっかけは何でしょう?

鶴田ハッキリとは覚えていません。でも小学生の卒業文集に「漫画家になりたい」と書いていたので、その頃から漫画が描きたかったのだと思います。ただ当時はプロに憧れていたものの、本気で自分がプロになろうなんて思っていませんでした。そして中学の頃にとんでもなく絵の上手いヤツがいて、彼の漫画を見て「自分の漫画なんて人に見せられるレベルではない」と考えてしまったんです。以降は真面目に描くのを辞め、同級生や先生の似顔絵を使った『少年探偵団』風の漫画とか描いていました。嫌われ者の現代文の先生や癖の強い数学の先生を悪役に仕立ててね(笑)。そして中学時代にいた絵の上手いヤツも同じ高校に進学し、完全に絵を描くことを辞めてしまいました。

──一度、筆を折られた先生が再び漫画を描き始めたきっかけは何だったのでしょう?

鶴田絵を描かなかった期間はバンド活動をしていました。かぐや姫やNSP(ニューサディスティックピンク)と同じ3人編成で、四畳半フォーク的なオリジナル曲を演奏していたんです。あの頃は多重録音にハマっていましたね。ところが大学に入ったらメンバーがバラバラになり、やることがなくなって自分が漫画を描いていたことを思い出したんです。

──それで漫画を描くことを再開されたのですね。

鶴田その頃に星野之宣先生の漫画に出会ったことも大きいですね。最初に読んだのは『サーベル・タイガー』で、星野先生の絵をゴールと定めて絵を修正し続けました。自分はそれほど才能がある訳でもないので、すべての時間を漫画につぎ込んで描き続けたんですよ。バイトしたり親に仕送りしてもらって生活しながら。

──大学は何を専攻されていたのでしょう?

鶴田写真工学です。その頃は特殊撮影のカメラマンを目指していました。スタンリー・キューブリックが「カメラマンを目指す者はカメラに精通してなくてはいけない」と言っていたので、自分は理系だったので芸術方面ではなく写真に関係のある工学科を選びました。でも本気で漫画家になろうと思って、大学も途中で辞めてしまったんですよ。そんな感じで若い頃はあっちこっちに転がっていました(笑)。

──デビュー作『広くてすてきな宇宙じゃないか』を描かれた経緯をお聞かせください。

鶴田大学を辞めた後は新書が買えないほど貧乏だったので、家の近所にある古本屋の常連でした。そこの店長の伝手で漫画家の先生を紹介してもらい、アシスタントを2年ほど続けていました。でもある日、先生が引っ越しをするので2ケ月も仕事が休みになってしまったんです。その間にやることがなくなり、それなら応募作でも描いてみようかと思って描いたのが『広くてすてきな宇宙じゃないか』です。描いている途中で電気も水道も止まってしまい、友達の家で完成させました。

──作品の構想はどのように固められたのでしょう?

鶴田アシスタント時代は小田急線で通っていたんですよ。電車での移動中、竹藪と海だけの景色を何日も視続けて、そこから着想を得たのがあの漫画です。だからあの作品、描きたかったことが3ページで終わってるんですよ(笑)。

自分はSF以外は描く気がないから「これはSFじゃありません!」と言ってごまかしました(笑)

──そこで定められたページ数に納める難しさを知った訳ですね。

鶴田そうですね。それまでは最初に原稿用紙に番号をふって、各ページに入る台詞だけ決めて描き始めていました。一応、ネームらしい工程ではありますが。そして講談社の「週刊コミックモーニング」編集部に持ち込んで賞をいただきました。ただ当時は「何を描いても良いけどSFは駄目!」と言われたんです。でも自分はSF以外は描く気がないから「これはSFじゃありません!」と言ってごまかしました(笑)。

──なぜSFは駄目だったのでしょう?

鶴田それは分かりません。あまり深く突っ込むと余計に描けなくなると思ったので、特に理由を聞こうとは思いませんでした。

──読者の反響はいかがでした?

鶴田それも分かりません。当時はインターネットもない時代でしたし、ファンレターが来るタイプの漫画でもなかったので。あと人に会って感想を聞くことも出来なかったんですよ。プロになってメチャメチャ忙しくなったので。ただ選考時にちばてつや先生がお尻の描き方を誉めてくださったことは聞きました。

──漫画は一人で描かれていたのですか?

鶴田そうです。あの頃は一日16~18時間、一本描くのに30日くらい費やしていました。

──そこは線の多い画風だからでしょうか。

鶴田単純に絵を描くのが遅かったからだと思います。だから時間を使ってストーリーを練ることができず、ネームも全部を決め込まずに作画に入るんです。ただ『Spirit of Wonder』の初期エピソードはアマチュア時代に思い付いたネタの焼き直しなので、アイデアのストックはありました。

──鶴田先生の作品はSF的な説明をなるべく減らし、絵の雰囲気で読者を納得させている印象があります。そのような作風はどこからの発想なのでしょう?

鶴田それは「SFは駄目」と言われたことが大きいです(笑)。SF的な説明を入れるとSF漫画になるので、「SFじゃない体」にしようとした結果だと思います。あと高校時代に最初の『スター・ウォーズ』を観て「なんて説明的な映画なんだろう」と思ったんですよ。そう思うくらいコマを割いて説明する手法が好きじゃないので、一コマの芝居の中にどれだけ情報を入れられるかを考えています。

──たしかに他作品と比べて台詞が少ない印象ですね。あと人物のないコマを入れて間を表現される手法も独特ですね。

鶴田背景だけの絵を描くのが好きなんですよ。キャラクターばかり描いていると疲れるので。それを意識してくれたのか、『Spirit of Wonder』のアニメもBG(背景)オンリーのカットが多かったですね。

──またクラシカルなテイストのメカも鶴田さんの特徴だと思います。

鶴田漫画家になった当時はロボットアニメの一大ブームで、アニメ風のキャラクターやメカが登場する漫画が増えたんですよ。そういう流行にはアマチュア時代から背を向けていましたからね。何よりも星野之宣っぽくないですし。あとメカに関しては『エイリアン』の影響も大きいです。H・R・ギーガーのメカって(生物の)外側と中身をひっくり返したようなデザインじゃないですか。あのゴチャゴチャした感じが大好きなんです。自分が生まれて初めて描いたメカは『マグマ大使』のロケットで、あのロケットや『レインボー戦隊ロビン』のペガサス、『キャプテンウルトラ』のシュピーゲル号が子供の頃は大好きでした。そこから紆余曲折あって『エイリアン』に行き付くのですが、僕の画力ではギーガーには及ばないので、どんなに真似してもパクリにはならないだろうと(笑)。僕の中でシュピーゲル号とノストロモ号は同系列で、僕が描くメカは両者の共通点を表現するようなイメージです。ただ、僕のメカは計画性なしに描いているので、もう一度描けと言われると困るんですよ(笑)。漫画用の設定は起こさないので、2ケ月ほどしたらキャラクターの髪型や服装も忘れてしまいます(笑)。

──先生の作品をアニメ化した『Spirit of Wonder』がいよいよBlu-ray BOXとして発売されますが、最初にアニメ化の企画を聞いたときの印象はいかがでした?

鶴田最初は何かの冗談だと思いました(笑)。自分はアニメから最も遠い漫画家だと思っていたし、キャラクターに寄った漫画も描いていなかったので。でも作るのなら「突貫で作った話なので、ストーリーを広げてください」とお願いしました。あとキャストに羽佐間道夫さんと渕崎ゆり子さんを入れてほしいと。

──羽佐間さんと渕崎さんはどの作品で感銘を受けたのでしょう?

鶴田羽佐間さんは大好きな『俺がハマーだ!』からです。『チャイナさんの憂鬱』のアフレコを見学した際、月を壊すシーンのリハーサルで羽佐間さんがハマーっぽいことを呟いて、誰もその台詞に反応しなかったんですよ。その光景が面白くて、このエピソードがアニメになって良かったと思いました(笑)。渕崎さんは『ソル・ビアンカ』というOVAのジュン・アシェル役が印象的だったんです。

──最後にメッセージをお願いします。

鶴田Blu-ray BOXに収録されているアニメ化された2シリーズは、僕にとって思い入れのある作品なんですよ。『少年科學倶楽部』はアマチュア時代から温めていた作品で、本当は火星には行けない話でしたが、単行本を出すときに火星に行く話を後編として追加しました。一方の『チャイナさん』は初めてキャラクターがほしいと思って描いた作品です。ぜひご覧になってください。

PROFILE

鶴田謙二(つるた けんじ)
1961年、静岡県生まれ。1986年に講談社「コミックオープン」に入賞し、入賞作『広くてすてきな宇宙じゃないか』でデビュー。代表作は『Spirit of Wonder』、『Forget-me-not』、『冒険エレキテ島』、『モモ艦長の秘密基地』など。アニメ『アベノ橋魔法☆商店街』ではキャラクター原案を務めた。またイラストレーターとしても活躍し、『水素 hydrogen』『Eternal』『コメット』『つぶあん』など数々の画集を発表。創元SF文庫版『キャプテン・フューチャー』の挿絵などを手掛ける。星雲賞ではアート部門を4回受賞。

 


<発売情報>

Spirit of Wonder Blu-ray BOX
2024年3月27日発売
価格:¥26,400(税込)
品番:BCXA-1914

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