インタビューココだけ | 映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ
『映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』 橋本昌和(監督)×小林由美子(野原しんのすけ役)×佐藤智恵(ボーちゃん役)スペシャル鼎談
『映画クレヨンしんちゃん』第32作目となる『映画クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ』のBlu-rayとDVDが2月25日に発売されます。インドを舞台に、歌と踊りが乱舞する一大エンターテイメント作品を作り上げた橋本昌和監督、“嵐を呼ぶ5歳児”野原しんのすけ役の小林由美子さん、そして本作ではしんのすけの前に立ちはだかる“暴君”(ボーくん)となるボーちゃん役の佐藤智恵さんの座談会をお送りします。インドを舞台にした理由、ミステリアスなボーちゃんの秘密、そして劇中でクライマックスに流れる「あの曲」についてなど、大いに語っていただきました。
――まずは今回の作品でインドを舞台にした理由は何だったのでしょう?
橋本いくつか理由があるのですが、今回の作品を通じて「人生は楽しい、楽しんでいいんだよ」というメッセージを子どもたちに伝えられたらいいな、と思っていました。
そこで舞台をどこにするかを考えたとき、インドがいいんじゃないだろうかと思いつきました。僕はインド映画が好きでよく観るのですが、エンタメ性に溢れていて、人を楽しませようという情熱がすごいんです。インドの国民性もすごくポジティブで寛容なイメージがあります。そういうインドのイメージが「楽しむ」というテーマを描くときに一番合っているんじゃないかなと感じました。
――橋本監督が2015年に監督された『オラの引越し物語~サボテン大襲撃~』(15年)はメキシコが舞台ですが、実はインドを舞台にすることも考えていたそうですね?
橋本そのときはまったく違う内容で、パリに引っ越そうと思ったら間違えてインドに行っちゃった、みたいな物語でした(笑)。それからずっとインドは頭の中で引っかかっていて、「次の作品でインドはどうかな?」と毎回考えていたんです。
小林だいぶあったまっていたんですね!(笑)
――今回はカスカベ防衛隊のボーちゃんをフィーチャーした物語です。佐藤さんはボーちゃんにこのような形でスポットが当たると思われていましたか?
佐藤全然思ってなかったです。だから余計にびっくりしました。ボーちゃんって、誰かに寄り添ったり、後押ししたりするポジションが多くて、ボーちゃん自身が前に出るエピソードはテレビシリーズでも劇場版でもなかったんです。だからどういう話になるのかな? と思っていました。だから脚本を読んで「なるほどね」と思いましたね。元々のボーちゃんでは作品として成り立たないので、どんどん変質することで、みんなが絡んできてドラマが生まれるんだな、と。
――小林さんはいつもと違うボーちゃんのやりとりを演じてみて、いかがでしたか?
小林ボーちゃんから「野原しんのすけ!」と言われたときはグサッと来ましたね。呼び方一つでこんなに変わるものかと。友達にそんな風に言われるのはショックなんだな、と思いました。
佐藤距離感がいつもの感じとぜんぜん違うもんね。
小林ボーちゃんの「僕の何を知ってるの?」というセリフにもドキッとしました。何も考えずに友達としてやっていたな、と思いましたし、カスカベ防衛隊の友達について改めて考えるきっかけになりましたね。どんなにボケ倒しても風間くんは的確にツッコミを入れてくれるし、どんなに虐げてもめげずにマサオくんはついてきてくれるし(笑)。ボーちゃんはいつもそばにいてくれるし、なんだかんだと引っ張ってくれるネネちゃんもいる。しんのすけはすごく友達に支えられていたんだな、友達に恵まれているんだな、とも思いました。あらためて友達を意識して感謝するいいきっかけになりましたね。
――小林さんはボーちゃんの魅力をどのようなところだと感じていますか?
小林ボーちゃんは普通の子と見ている世界が違うような気がします「石が好き」というのもそうですが、自分の世界をすごく持っていて、それを別に押し付けるわけでもないんですよね。そして、しんのすけが変なところに行こうとすると、そうじゃないよ、と止めてくれる。みんな止めてくれるんですけど、ボーちゃんはさりげなくスッと止めてくれる感じですね。
ボーちゃんは常に大木のようにどっしり構えてくれている存在だから、しんのすけだけじゃなく、他の防衛隊の子たちも一目置いているのでしょうね。何かあったとき、ボーちゃんに相談したら、いい答えをくれるんじゃないかと思っている。同じ年だけど、すごく頼りになるお兄さん的な存在でもあるし、一歩引いてまわりの人たちを見ているような感じの友達だと思っています。
――佐藤さんは30年以上ボーちゃんを演じてきて、ボーちゃんの魅力をどう感じていますか?
佐藤ボーちゃんはいい意味でも悪い意味でもマイペースで、誰に対してもニュートラルな感じがします。だから誰に対しても、公平で公正なんです。
小林「ミステリアスでセクシー」とも言われましたよね(笑)。
佐藤そうそう(笑)。韓国で『クレヨンしんちゃん』がすごく人気で、K-POPのアイドルの子が「ボーちゃんはミステリアスでセクシー」って言ってくれたんです。でも、その通りですよね。
――ミステリアスといえば、両親のこともほとんどわからないんですよね。
佐藤家族構成もくわしくはわからないし、どんな家に住んでるのかとか、どんな部屋で暮らしてるのかとか、一切出てこないんですよね。
橋本これはキャラの魅力というより、作品的な部分の魅力ですけど、30年以上続いたシリーズでまだこんなに謎があるってすごいですよね。「僕の何を知ってるの?」と言われて「たしかに」と思っちゃいました(笑)。風間くんに言われても、「いや、けっこう知ってるよ」と思いますから。
佐藤私はボーちゃんの内面的な部分を考えて「僕の何を知ってるの?」と言ってましたけど、考えてみたら「ボーちゃん」という名前しか知らないんですよね(笑)。フルネームさえわからない。幼稚園でも普通にボーちゃんって言われていますし。
小林ミステリアス!
橋本「僕の何を知ってるの?」というセリフに重みがありますよね(笑)。
――ボーちゃんが変わっていくのと同時に、しんのすけとの関係も変化していきます。小林さんは演じていていかがでしたか?
小林ボーちゃんと戦うシーンは、やっぱりグッと来るものがありましたね。ボーちゃんはいつものボーちゃんじゃないけど、でもやっぱりボーちゃんなんですよ。ボーちゃんが最後に「ごめんね」とポロッと言うところは「泣いてしまう……! 小林、出てくるな!」と思いながら演じていました(笑)。それと幼稚園の場面の回想シーンは劇場に何度観に行っても、こらえきれなくて泣いてしまいます。
しんのすけとしては、どんなボーちゃんでもいいんです。鼻水を垂らしていても、垂らしていなくてもどっちでもいい。「ボーちゃんを元に戻したい」という気持ちでもないですし、正義感で「ボーちゃんを更生させたい」とも思っていなくて、「みんなで一緒に遊ぼうよ」と思っているだけなんですね。純粋な5歳の願いだと思います。だから、みんなで一緒に戦った後、最後は楽しく笑っていたいよね、というのがすごくカスカベ防衛隊っぽくて嬉しかったです。
――佐藤さんはボーちゃんとしんのすけのやりとりを演じていかがでしたか?
佐藤ボーちゃんは「紙」に取りつかれちゃっているので、もう悪者の心になっているんです。ただ、しんちゃんをリスペクトしているからこそ、侮ってはいけないというつもりなので、すごく頑張って戦ってると思うんですよね。しんちゃんはすごく複雑だったと思いますが、ボーちゃんはある意味純粋だったと思います。でも、幼稚園のことを思い出して、みんなと友達だったことを思い出すんですよね。普段のボーちゃんに戻れたから「ごめんね」と素直に言えたんです。
「あんな風になっても、みんなに友達だと思ってもらえるなんていいな」というアリアーナちゃんのセリフがあって、本当にボーちゃんは幸せな子だなとしみじみ思いました。
こんなにボーちゃんがたくさん喋ることもなかったですから、こんな作品を作っていただいてすごくありがたかったし、嬉しかったですね。次はネネちゃんかな?
小林たしかに! 超絶サスペンスになりそう(笑)。
――先ほどお話に出てきたゲストキャラクターのアリアーナは現代的で非常に面白いと感じました。どのようにできたキャラクターなのでしょう?
橋本企画の初期の段階だと、もっと物語に絡む感じだったのですが、そうするとアリアーナが主人公のようなお話になってしまうので、今回はしんのすけとボーちゃんの話にしたいというのもあって、役割を外して現代っぽい女の子にしました。今どきいそうな女の子にしたかったので、インドにロケハンに行ったとき、公園で散歩している女の子に「最近どんな音楽が好きですか?」とインタビューしてリサーチしたんですよ。
小林へーっ!
――しんのすけとアリアーナが大好きな『ブリっとブリブリキュア』は劇場でも子どもたちが大爆笑していたましたが、これはスムーズに許可を取れたのでしょうか?
橋本はい、同じテレ朝で『しんちゃん』ともコラボしたことがありますからね。「キュアウコン」と「キュアオルニチン」という名前を出したら、「これなら将来絶対『プリキュア』に出てこないからOKです」と言っていただけました(笑)。
――そして今回はなんと言ってもミュージカルシーンですよね。
小林めちゃくちゃ楽しかったです!
佐藤「THIS IS ボ!」を歌うのはすごく楽しかったですね!
小林あれは名曲ですね!
佐藤歌がすごく好きなんですけど、いつもボーちゃんとして歌うときは一人だけ遅れて歌ったりすることが多くて、あまり前に出て歌えないんです(笑)。今回は一人だから思い切り歌えました。録音があっという間に終わって、ちょっと寂しかったので、カビールとディルの歌を山寺宏一さんと速水奨さんが歌っているのを見学させてもらって、「すごい、すごい」とか言ってました(笑)。
――そしてみんなが気になっているのが、クライマックスで流れる「Danger Zone」です。飛行機を操縦するひろしが鼻歌で歌うという名シーンでした。これはどういった経緯で使用したのでしょう?
橋本NHKに『映画音楽はすばらしい』という番組があるのですが、6歳の息子がすごくハマっていて、ちょうど脚本読みをやっている頃に何度もリピートして流していたので、頭の中でぐるぐる「デンジャーゾーン」が流れていたんです(笑)。それで使用しようかと。
佐藤テンションが上がる曲だから印象的ですもんね!
小林シーンとすごく一致していて、ぜんぜん不自然なく、すっとあの曲が入ってくるんですよ(笑)。
佐藤そして、森川(智之)くんが絶妙に上手く歌うんですよね(笑)。本当にお父さんが適当に歌う感じで。
小林わかるー!(笑)
佐藤私も一緒に歌いたかった! 大好きな曲だから一緒に歌うのを楽しみにしていたのに、脚本を見たら私だけいなかったんですよ(笑)。やっぱりみんなと仲良くしていなきゃダメですね。それにしても、よく許可が下りましたよね?
橋本絶対に無理だと思いました(笑)
――では、あらためて本作の最後に見どころを教えてください。
小林全部見どころなんですけど、最後にチャパティを退治するとき、みんなで手をつないでお尻をふりながらステップをする場面がありますが、あれが「カスカベダンサーズ」だと橋本監督に教えていただいて鳥肌が立ちました(笑)。
橋本だから冒頭の歌詞をセリフでもう1回言ってるんですよ。
小林そうだ! 回収してるんですね!
佐藤やだ、今気付いた! 私たちも回収しました(笑)。歌や踊りなどはもちろんですが、インドの車窓の風景をぜひじっくり観ていただきたいですね。本当にロケハンをされているだけあって、一緒にインド旅行をしている気分になれると思います。
橋本ひとつ挙げるとしたら、最後のウフンアハーンさんのセリフですね。この作品は子どもたちの友情がテーマですが、友達を作るのがあんまり得意じゃない子に悲しい気持ちになってほしくないので、そういう子たちへのメッセージも含めて、脚本のうえのきみこさんと何度も相談しながら心を込めて書きました。大切なセリフをウフンアハーンさんに言わせちゃうところが『しんちゃん』らしいところですけどね(笑)。
PROFILE
橋本昌和(はしもと まさかず)
アニメーション監督、演出家。主な監督作品に『レイトン教授と永遠の歌姫』『TARI TARI』『ソウルイーターノット!』映画『クレヨンしんちゃん』シリーズなど。
PROFILE
小林由美子(こばやし ゆみこ)
1979年生まれ。千葉県出身。代表作は『デュエル・マスターズ』切札勝舞役・切札勝太役・切札ハム勝太役・切札ジョー役、『怪盗ジョーカー』ハチ役、『クレヨンしんちゃん』(野原しんのすけ〈2代目〉)など。
PROFILE
佐藤智恵(さとう ちえ)
7月1日生まれ、埼玉県出身。青二プロダクション所属。少年役などを中心に活躍中。代表作に『忍たま乱太郎』二郭伊助役他、『家なき子レミ』ジョリクール役、『とんとんみーの冒険』とんとんみー役、『妖怪ウォッチ』カンチ役他などがある。
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©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2025