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【映画クレヨンしんちゃんなんでも図鑑】第14回「戦国時代」[しんちゃん通信]

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1993年に上映が始まった『映画クレヨンしんちゃん』は、今年30周年! これまでDVDでのみ発売されてきた旧作映画19作品のブルーレイ化プロジェクトが始動! 2022年12月から約1年間をかけて隔月で全19作を発売予定です。「映画クレヨンしんちゃんなんでも図鑑」第14回は、映画クレヨンしんちゃん 第10作『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』(2023年6月28日発売)の世界観やキャラクターのモチーフとなっている「戦国時代」を紹介!
※紹介文には本編のネタバレを含みます。

【映画クレヨンしんちゃん 第10作】
映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦

戦国時代

文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞ほか、数多くの賞を受賞したことでも知られる本作は、感動的なストーリーもさることながら、原恵一監督が心血を注いだ戦国時代のリアルな描写も特筆すべきものがある。

しんのすけをはじめとする野原一家がタイムスリップしたのは、戦国時代も終盤にさしかかった天正2年(1574年)。前年に室町幕府が事実上滅亡し、織田信長が独自の政権を打ち立てた頃にあたる。

関東でも戦国大名が領地を争って合戦を繰り広げていた。しんのすけが住む埼玉県春日部市周辺は、市名の由来となった春日部氏という武家が拠点としていたが、戦国時代末期になると近隣の太田氏などの戦国領主の勢力下となっていた。

春日部市に隣接するさいたま市岩槻区には、太田氏が居城にしていた岩付城(岩槻城)がある。本作に登場する井尻又兵衛に仕える仁右衛門が最初の小競り合いの後、「岩槻の奴らは相変わらず逃げ足が早いのう」と言うのは、この太田氏(岩付太田氏)を指していると思われる。

なお、岩付城では太田氏の軍が北条氏綱や豊臣秀吉の大軍相手に善戦した、岩付城の戦いが3度にわたって行われている。本作で描かれた春日城城主の春日康綱と隣国の大大名・大蔵井高虎の大軍勢との合戦のイメージソースは、このあたりにあるのかもしれない。

合戦についても、それまでの映画やドラマで描かれた武将同士が刀で斬り合うような勇壮なものではなく、あくまでも考証に基づいたリアルな描写が徹底されていた。合戦で使われている武器は、火縄銃、弓矢、投石、そして槍である。一対一の局面にならない限り、刀は登場しない。

しんのすけが又兵衛と初めて出会った合戦では、火縄銃とともに竹束(たけたば)と呼ばれる盾が登場している。火縄銃の登場により、弾丸を貫通してしまう木の板の盾が役に立たなくなったため、弾丸が貫通しにくく、材料が容易に調達できる竹束が使用されるようになった。火縄銃を撃った後は、弾込めに時間がかかるため、味方が弓矢を放っている(防ぎ矢と呼ぶ)。

遠方から火縄銃で射撃した後、弓矢を大量に放ち、同時に投石で攻撃を行う(投石には布で作った投石器が用いられていた)。近距離戦闘では長槍で敵を殺傷する。これが戦国時代に行われていた合戦の戦い方である。

合戦における主な武器は槍である。馬に乗っている井尻又兵衛は4メートルほどの槍を持っているが、足軽頭の仁右衛門はさらに長い槍を持つ。敵に近づくと、長槍を持った兵が隙間なく横一列に並び、前進する槍衾(やりぶすま)という戦術で攻め込んでいった。槍衾は騎馬の突撃を防ぐのにも効果的である。

大蔵井高虎が春日城を攻める合戦シーンでは、法螺貝の合図で進軍を始め、陣鐘(じんがね)を鳴らして突撃が始まる。指示をする武将は、背中に母衣(ほろ)と呼ばれる風船のような武具を背負っていた。これは大将の側近だけが着用が許される名誉ある装飾具である。春日城に一番槍で乗り込んだ佐久間権兵衛と名乗る武将も母衣を背負っている。

高虎の軍勢は移動式の攻城櫓(こうじょうやぐら)から弓矢や焙烙玉(ほうろくだま)と呼ばれる爆弾を放って、春日城を攻め立てた。高虎は夜になると兵を引いていたが、戦国時代の合戦では夜戦も多く行われていた。又兵衛たちも夜明け前に奇襲をかけている。

これほどまでにリアルに描き込まれた戦国合戦は、実写の時代劇でもなかなか見当たらない。その中に突拍子もないギャグがあり、家族、恋愛、生死などを描いた普遍的な人間ドラマがある。ひろしがトレーニング器具で敵を威嚇するシーンは何度見ても笑えるし、みさえがしんのすけを助けるシーンや又兵衛との別れのシーンは何度見ても泣ける。そして本作の魅力を下支えしているのが、リアルに作り上げられた戦国時代の描写なのである。

 

<発売情報>

Blu-ray
発売日:2023年6月28日
税込価格:¥5,280
品番:BCXA-1795

関連記事:『しんちゃん通信』 映画作品ちょこっとレビュー第1回 “友情編”

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