第11回「明かされた真実」[トップをねらえ2!大百科]
『トップをねらえ2!』の世界観を解説するコーナー「トップをねらえ2!大百科」がオープン。既にファンの方も初見の方も、これを読めばトップ!シリーズがもっと面白くなる、作中の世界観を深堀りする内容が満載! 第11回は「明かされた真実」です。
※電撃ホビーマガジン2005年3月号から2006年7月号まで掲載された『トップをねらえ2!』の作品紹介「トップをねらえ2!大百科」を再掲したものです。
パイロットの道は辛くて長い訓練
土星の第48番衛星タイタン。その地中には異常な重力場を形成する「変動重力源」が埋もれていた。調査の結果、それは遙か昔に宇宙怪獣と戦ってここに墜落した異星人のバスターマシンではないかと推測された。なぜなら変動重力源の周囲には多数の宇宙怪獣の死骸が化石となって残っており、交戦した痕が見受けられたからだ、フラタニティは専門の委員会を設置。極秘裏にかつ大々的に発掘作業を行った。発掘の経過で、変動重力源は死んではおらず長い冬眠状態にあるだけだと判明する。プロジェクトは発掘から、その変動重力源の覚醒へと目的を変更することになる。
そして時が過ぎ、現在の発掘委員長であるサーペンタインの双子が指揮する元、ついに変動重力源を目覚めさせる瞬間がやって来た!この事態を恐れるかのように、続々とタイタンへ集結してくる宇宙怪獣たち。妨害はさせまじと布陣するディスヌフをはじめとした最強バスターマシン軍団。一同が見守る中、ついに変動重力源が動き出した!!
タイタンの地表を割って現れたのは、全長1キロにも及ぶ巨大な物体。いよいよ伝説のバスターマシンが復活したのか!?奇怪な叫び声を上げた変動重力源は、火球砲の一閃をもってタイタン北半球を覆っていた宇宙怪獣たちを一瞬のうちになぎ払った。変動重力源の力をもってすれば、宇宙怪獣などは簡単に駆逐できる。その光景を見た人類は誰もがそう思い、驚喜した。だが何かがおかしい。変動重力源はその破壊衝動の矛先を、宇宙怪獣からバスターマシンへ、人類へと向けた。この凶悪なまでの横暴さ、天を焦がし惑星を焼く戦闘能力。毒々しいまでの青・紫などの色に彩られた装甲、側面には窒素大気を勢いよく吸い込むエラ……冬眠から目覚めた変動重力源。それこそが、かつての人類を絶滅の危機にまで追い込んだ宿敵「本当の宇宙怪獣」だったのだ!
さかんに「一万年前」と発言していた火星大学教授。しかし本当に変動重力減の遺跡が一万年前のものかどうかは不明。時代推測は地層などから判断されたのだろう。
本当の宇宙怪獣は凄いんです
我々は見たことがある!先端部が開口しレーザー発進体を露出させ攻撃する姿に見覚えがある!そうこの変動重力源=真・宇宙怪獣こそ、前作『トップをねらえ!』第4話に登場し、未完成のまま出撃したガンバスターを苦しめたギドドンガスである。もちろんノリコが戦ったものではなく、同じ巡洋艦タイプ・ギドドンガス級の個体なのだが……。
巡洋艦級(混合型)「ギドドンガス級」全長3000メートル・最大幅600メートル。ワープ能力を有する大型タイプ。高速突撃形態から頭頂部を展開した火球(主砲)射出形態へ変形可能。背面上部に連装砲塔を装備。また腹節部より槍状速射弾を射出する。
それは長い間冬眠状態にあったが、戦闘能力になんら欠けた様子はなく、巨大な火球砲は健在。砲撃は周囲にいた敵を討ち滅ぼしただけに留まらず、タイタンの地殻をも貫通・破壊したほど。推定一万年の眠りについていた間も、衰えたりはしなかった様である。
ここでちょっとした疑問が浮かび上がる。変動重力源はそんなに長い間眠っていて大丈夫なのだろうか? ちなみに変動重力源の身体を構成しているのは、タンパク質などのアミノ酸結合物質。これはサーペンタインの双子が変動重力源の肉を食べていたところをみると確実だろう。そうだとするなら、肉体を維持するための栄養補給が必要なはず。いや、それ以上に炭素系生物だというなら、生身で宇宙空間に出ることなど不可能なはず! なにしろ炭素系生物を構成するタンパク質はとても脆い物質なのだ。100度を超えるような熱には耐えきれないし、マイナス20度を下回る環境では活動に大きな制限が加わる。さらに放射線に対する防御能力も低く、弱い放射線でも長時間晒されていれば変質してしまう(人類も宇宙空間で活動する代償に、宇宙放射線病の危険にさらされている)。
宇宙空間という厳しい環境で機械的な補助もなしに、炭素系生物が生存&活動できるのだろうか? もちろん人類が宇宙空間で宇宙服を着て活動するように、機械文明による外部補助を使うという方法はある。しかし、かつての地球帝国宇宙軍統合資料局の報告書によると、真・宇宙怪獣の死骸から機械部品のようなものは一切発見されていないという。では考えにくいことだが、熱伝導のコントロールや放射能を防御するシールドを生み出す生体器官が用意されているのだろうか?この問いに対しても答えはNOだという。それどころか縮退炉やバニシングモーターなどに相当する生体器官すらも確認されていない。では真・宇宙怪獣はどのような方法で、宇宙空間という酷寒(もしくは灼熱)の世界から自分を守り、超高速&空間跳躍で移動し、敵を破壊するのだろうか?必要とあれば何千年にも及ぶ冬眠をも可能とする力の源とは、いったいなんなのであろうか?
その輝きは人知を越えた光
ここで注目したい場面がある。それは変動重力源にある「エラ」がアップとなるシーンだ。前作から描写されていることだが、呼吸するかのようにエラが動くと同時に、その周囲には青白く輝く光の粒子が漂っている。青白い光……それはトップレス能力者が力を使った時に現れる光にそっくりではないだろうか?地球圏の各機関で現在もなお研究中である、仮想粒子パウダー。それがエーテルと衝突しておこる(と考えられている)発光現象「エーテル・エキゾチカ」にそっくりなのだ!パウダーの存在が立証されていない現在では仮定に過ぎないが、変動重力源もトップレス能力に似た力、いわゆる超・能力を行使できるのではないだろうか?人類のトップレス能力者たちが作り出すクレフシン発光と比べると、変動重力源の周囲で光る発光現象はチカチカして小さいと思うかもしれない。
しかし変動重力源のスケールを思い出してほしい。今回登場したギドドンガスは、全長3000メートル/最大幅600メートル。その周囲に光る小さな燐光は、フラタニティのトップレス能力者の頭上に光るクレフシン発光と同じかそれ以上の大きさがあるといって良いだろう。一つの輝きが50メートル級のバスターマシンを動かす力とすると、変動重力源の周囲で煌めく輝きだけでどのぐらいの奇跡が起こせるというのだろうか?あれだけの輝きをもってすれば、光速に近いスピードで宇宙を駆けめぐることも、空間を歪めて遙かな距離を一瞬で移動することも、強力な熱線で敵を焼き尽くすことも不可能ではないだろう。
さらに変動重力源が超・能力を使うという仮定の下で考えると、納得できる事象がある。それは彼等の「通信能力」である。前作『トップをねらえ!』の4話で、地球に帰投しようとしていた地球軍の艦隊は、物理法則が適用されないワープ空間内で真・宇宙怪獣の奇襲を受けている。レーダー波も使えない、電磁波・重力波も測定できない異空間で、真・宇宙怪獣は地球艦隊を識別し、同士討ちもせずにほとんどの艦を沈めてみせた。これも超・能力によるテレパシーによって相互位置の確認をしていたとすれば納得いくことだろう。テレパシー波が通常の物質などに妨げられたりしないというのは、旧ソビエトが陸上と海中の潜水艦間で行ったテレパシー通信実験によって証明されている。
さらにもうひとつ真・宇宙怪獣がテレパシーを使っていただろうと推定できる事実がある。前作『トップをねらえ!』6話、カルネアデス計画終盤において、起動し始めたバスターマシン3号に対して真・宇宙怪獣たちが突撃作戦を企てたという事例である。バスターマシン3号を確認した真・宇宙怪獣たちは、無謀ともいえる短距離ワープによって自らの命を省みない突撃を行った。その行動は闇雲なものではなく、波状攻撃というある一定の秩序立った戦法だったという。このような自らの命を賭してでも、という作戦命令を如何にして仲間に下したのか?それを全軍に伝えた方法は?まさにこれこそ感情共有(シンパシー)をも含んだテレパシー通信だと考えられるだろう。斥候が見たバスターマシン3号のデータは、即時に判断機能を有する真・宇宙怪獣にテレパシー転送。人類の恐るるべき暴挙に気が付いた判断機能は、彼の感じた焦り・恐怖とともに、真・宇宙怪獣全体に命令を伝えたのだろう。斯くして、真・宇宙怪獣は自らの種族の命運を懸けた突撃に躊躇することなく身を投じたのである。その時の恐怖、多くの仲間を失ったことに対する人類への憎悪は、銀河の隅々までテレパシーで伝わったことだろう。人類は忘れても、真・宇宙怪獣たちはバスターマシン3号が炸裂したときの恐怖をいつまでも覚えていると考えることはできないだろうか。そして人類抹殺という本能をさらに猛らせ、激しい憎悪をまき散らして人類に牙を向けてくるのだとも。
変動重力源(真・宇宙怪獣)の周囲を漂う青い光の点。前作から登場するこの一つ一つの輝きが『トップ2』への伏線だったのだ!
人類に向けての憎しみ撒き散らす変動重力源。その悪意を感じ取ったラルクたちは萎縮して動くことができない。
いけいけ僕らの宇宙怪獣軍団?
タイタンに眠っていた変動重力源が「真・宇宙怪獣」だった。ならば、それに猛然と立ち向かい、一度は冬眠に付かざる得ない状況にまで追いこんだという「今の宇宙怪獣」の正体はいったいなんなのだろう?宇宙怪獣の天敵と言えば、その存在は一つだけ。すなわちバスターマシンである!そう、いま人類が戦っていた敵、宇宙怪獣と思いこんでいた相手とは、実は無人バスターマシンだったのだ。 ではそのバスターマシンが太陽系外縁部でウロウロしていたのは何故か? 答えは簡単。太陽系外から侵入しようとする変動重力源を迎撃していたのだ。地球側から見て冥王星から先にあるカイパーベルト天体は、いわば人類の居住環境・太陽系の絶対防衛ライン。ここに陣取っていれば、変動重力源も簡単に侵入したりはできない。彼等は、赤い天の川というガス帯に配備され、変動重力源の侵攻から永続的に地球を守るために配備された「バスター軍団」なのである。その数は推測で数億。なぜ確定した機数が言えないかというと、バスター軍団は破損すれば新たに生産され、現在の装備で対応できないとなればすぐさま新型が生産されるからだ。その製造工場となっているのは、人類が宇宙怪獣の巣だと睨んでいたブラックホール周辺。ブラックホールの潮汐力をエネルギーに、材料はブラックホールに引き込まれつつある元雷王星の構成物を使っているという。その他にも、巨大な威容を誇るベムバスター級(4話登場の大型宇宙怪獣……ではなくバスター軍団)の内部で、改修・修理が行われるようになっているらしい。
上のギドドンガスと比べてみると、現在の宇宙怪獣(バスター軍団)は直線&曲線の塗り分けなどで生物らしさが薄い。ストライプ模様という共通項もある。 上がベムバスター級、下がパララゴン級。
バスターマシンだというなら、どうして人間型じゃないのか、どう見たって宇宙怪獣そっくりじゃないか!と誰しもが思うことだろう。今となっては推測することしか出来ないが、このバスター軍団の使命は「無人バスターマシンによる、変動重力源の随時撃退」だと思われる。もしかしたら配備当初は人型をしていたのかもしれない。しかし「人間が乗っているわけではない」、「効率重視・単機能に特化した」などの理由により、次第に改修が進められていった結果、「宇宙怪獣そっくりの外見」になってしまったのだと思われる。構造もメカニカルなものから、より整備が簡便で柔軟性に富む物質であるナノマシンに転換されていったのだろう。
だが、変っていない部品もある。それは彼等の動力部分。ワープ能力を駆使し、宇宙を駆けめぐる動力……トップレス能力のような超・能力でなければ、それは一つしかない。そう、バスター軍団の主動力には、人類が捨て去ってしまった縮退炉技術が使われているのだ。そして内部には、旧世界の超兵器が搭載されている!例えば4話で登場したビーゴン級には接近戦用超兵器バスターコレダーが搭載されている。ビーゴン級の戦闘方式は単純で、スピードを生かして群れをなして吶喊攻撃を敢行すること。だがそれは本当の攻撃への布石にすぎない。敵に突き刺さると同時に、触手を突き刺しバスターコレダーを発射、敵を撃滅するのである。また1話に登場したツインテール級が腹部から発射したビームは、実はバスタービームである。これは単機で敵陣深く侵入し、集めた情報を確実に持ち帰るため必要と考えられた重武装だったのだろう。最後の切り札的な武装であり、その照射時間などは長くはないと思われる。この武器をディスヌフに対して使用しているが、これはなにがなんでも情報をもって帰らなければならないという状況から使用に踏み切ったという、いわば苦渋の決断だったと思われる。火星上でバスタービームを撃っていれば、もっと簡単にディスヌフから逃げられただろう。しかし、周囲にいた人類に被害を及ぼしてしまう可能性が高いと判断したため、使用できなかったのだ。さて、これらの例から分かるように、バスター軍団は機能特化という方向で進化をした。そのため、以前の様な「無敵の万能兵器」的な形状、つまり人型形態を取る必要がなくなったのだ。宇宙空間での戦いという状況下においてバスター軍団が特化していった姿は、敵である宇宙怪獣と瓜二つ……まさに皮肉というしかないだろう。しかしそれは、宇宙怪獣の姿が進化の究極体であるという証明なのかもしれない。
タイタンを貫通し、その裏側に対比していた宇宙怪獣(バスター軍団)を襲う変動重力源の熱線砲。その威力を見よ!
変動重力源が現れた現在、トップレスと遊んでいるヒマはない!とばかりにトップレスたちは無視されてしまう。
宇宙を漂う忘れられた軍団
永劫とも長きにわたる時間の中で地球を守り続けてきたバスター軍団。なにも語らず黙々を働き続けてきた彼等を、地球人類は感謝の念をもって見守っていた……なんていうことはなく、すっぱり忘れてしまっていた! 拡大政策を止めて、種族としての社会的退行をしていた人類にとっては、かつての庭先だった冥王星圏内まででも十分に広すぎた。太陽系外に進出しようという気概は失っていたのである。一方でバスター軍団は人間のケアがなくても、黙々と自己修復・自己進化をしつつ、時折やってくる変動重力源と戦ったり、時には侵入を許してしまい慌てて追撃したり、なんて日々を過ごしていた。希薄な関係は、やがて無関係へとなり、地球人類はバスター軍団の存在を忘れてしまったのである。「そんな重要なことを忘れるわけがない!」そう主張する人がいるかもしれない。一人の人間はいつまでも覚えていられるかもしれない。しかしその子供、さらにその孫にまで情報は正確に伝わるかというと保証はできない。書籍などの文字に残したとしても、焼失などによって無くなってしまう。では電脳でデータとして残せばいい、となるだろう。未来世界なわけだから、記録媒体も大容量になっているはず。などと思っていても、時の移り変わりと共に記録する情報は膨大になってしまうもの。データを残しておこうと思っていても、それがいつまでも残っているという保証はどこにもない。たとえ残していたとしても、その事実を保存した人間が忘れていたとしたら? 情報は無くなってしまう……。
こうして、情報の消滅とともに、バスター軍団の存在という歴史的事実も雲散霧消してしまったのだ。
そして遥かなる時の流れの果てで、バスター軍団と人類は再会した。進化の果てに変わり果てた姿となったバスター軍団の姿を見た人類はこう叫んだのである「あれは伝説に出てくる宇宙怪獣だ!」と。守るべき人類からの攻撃を受けたときにバスター軍団はどういう判断を下したのか。いや、それ以前に数億体いるというバスターマシンは、どうやって統括制御されているのだろうか? 人類が作ったということを考えれば、その命令形態は軍隊を模したトップダウン形式になる可能性が高い。では、バスター軍団のトップとは何者なのか。その存在はなぜ人類との無意味な戦いを続けるようなことをしたのか? それは次回の大百科で追求していこう。
通常の戦闘ではほとんど姿をあらわさないという大型宇宙怪獣(バスター軍団)ベムバスター級が登場。母艦としての機能を持っている。
ビーゴン級の吶喊攻撃! この直後にバスターコレダーの超電撃が敵を襲うのだッ。
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