第13回「帝国宇宙軍&マシン兵器」[トップをねらえ2!大百科]
『トップをねらえ2!』の世界観を解説するコーナー「トップをねらえ2!大百科」がオープン。既にファンの方も初見の方も、これを読めばトップ!シリーズがもっと面白くなる、作中の世界観を深堀りする内容が満載! 第13回は「帝国宇宙軍&マシン兵器」です。
※電撃ホビーマガジン2005年3月号から2006年7月号まで掲載された『トップをねらえ2!』の作品紹介「トップをねらえ2!大百科」を再掲したものです。
『トップ2』ではハトリ大佐ぐらいしか登場せず、活躍シーンに恵まれていない帝国宇宙軍。しかし大人たちだって、世界を支えるためにがんばっているはず。
トップレスの子供たちの影に隠れつつ、頑張る宇宙軍をクローズアップ!
パイロットの道は辛くて長い訓練
ノノが宇宙パイロットになりたい!と勇壮なる大志を抱き、火星のマリネリス峡谷を飛び出てから幾星霜。片田舎から上ってきた女の子は、トップレスの見習いを経て、ついにバスターマシンを自在に操る存在となったのだ。元からバスターマシンだったという事実は置いておくとして……。
さて結果&状況はとにかく、トップレスでもない存在がバスターマシン宇宙船を操る存在となったという点では、異例とも言うべき短い例だといえるだろう。それでは普通の人間が、宇宙パイロットになるためには、どのぐらいの時間が掛かるのか?ここでもう一度、1話に出てきた宇宙砲兵科に挫折したという隊長さんの話を思い出してみよう。
「まずは宇宙高校か予科練を出たら、宇宙士官学校で最低4年。宇宙候補生試験に合格した後、宇宙訓練センターで38の宇宙兵装取り扱い免許を取得するのに、早くて6、7年。その後2年以上の現場勤務、上官の推薦状、3次まである最終選抜試験。全部クリアして晴れて宇宙艦隊勤務だ」
つまり最低でも12年かかってしまうという計算になる。18歳で宇宙士官学校に入り、そのままストレートにパイロットになったとしても30歳。しかも、最初の1年間は練習艦に乗艦という状態だったりする。壮年というにはまだ早いが、若者と言うにはいまいちな年齢だ。体力的に一番無理が効く20代は、すでに過ぎ去ってしまっている。同じ軍隊ということで、日本の自衛隊の空軍パイロットを例として出してみよう。18歳で航空学校に入学、20歳で幹部候補生となり飛行訓練を開始。実戦部隊に配備されるのは大体24歳ぐらいだという。海自の乗組員にしても練習艦での航海が長い程度で、年齢的には同じである。体力バリバリの20代から、テクニックでカバーする40代までの約20年間を現役として活躍することになる。戦艦にしろ戦闘艇にしろ、宇宙パイロットになれば、激しいGで体を痛めつけられ、瞬間の判断を連続して強いられ、さらに艦の装甲一枚先にはエーテル流渦巻く世界!死と常に隣あわせという過酷な職業は、若いうちからの方がいいわけで……。
もっともこれは、宇宙軍のパイロットになって戦艦に乗って大暴れしたい、という人間の話で、民間の宇宙船パイロットだともう少し楽になれるという。とはいえ民間出身のパイロットでは、惑星の近隣をちょこっと飛ぶ程度の航路がメイン。惑星間という長距離を飛ぶ宇宙パイロットには、軍を退役したベテランパイロットが優遇されているのが実情だ。また、宇宙船に乗っているのはパイロット=操縦士や砲術士官だけではない。航法やレーダーなどのオペレーター、保守点検などを行う機関員、ご飯を作る主計科などなど、その業務は多種多様。宇宙船を操縦したいとさえ言わなければ、もう少し短い養成期間で宇宙船に乗ることは可能である。でも、やっぱり「私は宇宙船を動かしています」と胸を張って答えられるのは、フラタニティに入りバスターマシンに乗って大暴れ!というのに次ぐ子供たちの夢。みんなのあこがれの世界なのだ。天運によるトップレス能力と違い、努力をすればなれる可能性があり、しかも親方帝国・高給取りと言うこと無し。従って中国の科挙の如く、競争率が激しい超が付くエリート職になってしまっているのだ。
努力と根性で人類を守る!?
そんなエリートの宇宙パイロットを多く抱えている帝国宇宙軍。その全貌は、あまり明らかにされていない。もっともトップレスたちの活躍が派手に喧伝されるこの『トップ2』世界では、フラタニティに注目が集まってしまうためだが……。だが、本当に庶民を守っているのはこの宇宙軍なのである。宇宙軍は、帝国臣民の生命と財産を守り、治安を破る者があれば、即座に撃破殲滅することを任務とし、日々精進をしているのだ!もっとも、相手が宇宙怪獣で無ければ、という話だが。
第3軍極北艦隊ドラソー提督
今回はその宇宙軍の全体像を見ていこう。地球帝国が抱える宇宙軍は、その全員が志願兵によって構成されており、総兵力は90万人。主力兵器は、光子魚雷やビーム砲、グラビトロン砲でハリネズミのように武装した宇宙用戦闘艦である。その総数776隻! さて、この兵力90万人という人数だが、人間個人のスケールで考えると大組織に感じてしまうが、国家レベルで考えてみると……非常に少ない人数だったりする。『トップ2』世界の総人口は約百億人。一人の宇宙軍兵士の肩に一万人の生命が載せられている計算になってしまう。ちなみに人口一億三千万がいる現代日本の自衛隊は、24万人。大体一人の自衛官の肩に500人の国防が課せられている(警察官の人数は自衛隊の人数と大体同じ25万人なので、両方足すと1人あたり250人ぐらい)。さらに『トップ2』の世界は、人類の居住空間が太陽系全域に広がっている。ここを守るということになると、各地に軍隊を駐留させなくてはならない。今回新たに公開された宇宙軍の組織表を見ると、母星である地球(2カ所)をはじめ、首都のある月・火星・金星(2カ所)・アステロイドの東、西・貿易航路の要である木星・最前線となる海王星・神無月星と、11ヶ所も駐留箇所があるのだ。人員を平均的に割り振るとすると一ヶ所につき約3万人となってしまう。
この人員の少なさの理由の一端には、歩兵戦力が必要ないというのがあげられる。太陽系内に敵国家があるわけでなく、太陽系外に進出する予定も無い。制圧やその後に必要な統治を行う兵力は必要ないのである。では宇宙軍に要求されている任務とは何だろうか。すでに判明している主任務として、宇宙怪獣の監視と足止め(撃退と言えないところが悲しい……)がある。それ以外に、宇宙空間における治安活動が宇宙軍に任されている。活動の内容は、無法行為をする犯罪者の取り締まり、遭難・事故機の救助などがある。とはいっても太陽系内の航路は整備されており、航路安全局の目が常に光っている。宇宙海賊などという無法行為はデブリの多いアステロイドベルトでコッソリやるぐらいしかできず、不意の宇宙嵐や宇宙怪獣とのニアミス、整備ミスなどの事故が無い限り、遭難することも稀だ。また新しい資源の探査、新規開発という仕事も「ついで」という雰囲気で宇宙軍に任されている。これには宇宙船を遊ばせておくのはもったいないというのと、民間に委託しようにも資本力・機材が用意できないという台所事情がある。宇宙軍によって資源が含まれた小惑星が発見された場合、その管理は軍の外郭団体へと引き継がれる。この外郭団体には、軍の旧式宇宙船や装備が払い下げられており、そのまま発掘作業に移行したり、木星などの工廠に運ばれたりしているのだ。
そんな宇宙空間での活動以外に、自治政府内での治安活動の一部も軍に任されている。この任務に携わっているのが、自治政府軍に当たる第4・8・12・15軍司令部である。治安活動と言っても、道案内とか泥棒の取り締まりなんていう仕事は、自治政府内に設立された保安庁で処理するべきお仕事。宇宙軍に任されるべき仕事というのは、もっと凶悪な犯罪者の捕縛である。火星や木星には、地球からの独立を標榜し運動を行う反政府組織が存在しているのだ。主張をがなり立てるだけならまだしも、破壊活動などを用いて、自らの主張を通そうとするのは困ったものである。そんな不逞の輩を叩きつぶすのも、宇宙軍のお仕事。宇宙港や主要交通機関には宇宙軍のマシーン兵器が配備され、日々治安に目を光らせているのだ。もちろん自治政府が独自に組織する保安庁と軋轢が生じる心配もあるが、警察内部に宇宙軍からの出向将校や退役兵なども多く、大事になるケースは少ないという(生え抜き保安庁員と宇宙軍下級兵士のケンカ等は日常茶飯事らしい)。
さて、有象無象の独立主義者などはともかく、当の宇宙軍が暴走し、軍事政権を樹立しようと企むのではないか?という心配があるのは否定できない。トップレスも強大な戦闘能力を持っているが、所詮は子供。組織力はガキ大将程度だし、類い稀なるトップレス能力に酔って孤立主義に走る者が多い。しかも数年で能力を失うのでは、組織だった反乱などというのは無理というもの。では、最初から強固な縦社会の命令系統を持ち、様々な外郭団体を抱え、戦力を持っている宇宙軍が現政府を覆す……というのは、ありそうに見えて、考えられないことだったりする。宇宙軍が反乱を起こしたとしても、なんのメリットもないのだ。現在の帝国政府に対して、宇宙軍は軍事委員と枢密参謀という十分すぎるほどの影響力を持っている。軍にとって目の上のたんこぶなのは、莫大な予算を使い、軍をアゴで使うフラタニティのトップレスたちと、太陽系内を我がもの顔で飛び回る宇宙怪獣だけ。宇宙怪獣はどうにもできないし、フラタニティは宇宙怪獣を排除するのに必要。手出しができないという点では同じだったりする。
5話に登場する艦隊を率いる提督。変動重力源への対応など、頭の痛い問題を抱えるハメに。
軍用でデータ収集&解析を主任務としているアンドロイドだが、ずれた眼鏡を直す仕草など人間らしいクセがプログラムされている。
太陽系最遠部にある宇宙怪獣の巣へと進行する宇宙軍。フラタニティの存在が疑問視される現在、軍への期待は非常に高くなっている。
エリートのはずの宇宙軍だが、品格は別問題? というより、試験と教練の連続のため女の子に餓えていると考えるべきか。
我らが宇宙軍の明日はどっちだ!
トップレスに「あがりの日」が来るように、宇宙軍で働く宇宙戦士たちにも「あがりの日」がやってくる。いわゆる退役、軍隊を退職する日のことである。宇宙軍において、下士官や現場からの退役は65歳と規定されている。現在のサラリーマンよりちょっと遅いだけか、と思うのはちょっと早い。この時代は、医療や老化防止技術が発達しており、全人類の平均寿命は90歳。
軍隊を辞めた後に、平均で25年も人生が残っているのである。ここから第二の人生だ! とばかりに新しい世界へと移っていく人間も多い。もっとも、定年まで延々と軍に務める人間は少ない。老化防止技術が進歩したとはいえ、やはり年を取っていけば、実務部隊で働くのに身体がついて行かないのだ。職務がきついと感じた人は定年前に除隊し、民間に下ったり、軍隊に縁が深い関連会社に移籍してしまう。移籍先には、それこそ先ほどの資源採掘会社や自治政府の保安庁要員、民間宇宙船会社、軍隊に補給物品を納める会社などなど種々様々。宇宙軍で取った資格によって、第二の人生も決まってくるのだ。また、実務に携わるのは無理だが、除隊したくないという軍人たちは、内勤のデスクワーク職や後進を育てる教官へと職務を切り替えていく。もっとも上級士官で政治的な野望に燃えているような人物は別。そういう人間はさらに上の将軍職や提督、参謀院の長老などへと出世道を登っていくのだ。
まあ、任務に励んで立身出世街道を走るもよし、補給部隊や内勤でのんびり定年後にもらえる軍人恩給を勘定して過ごすのもよし、というのがいままでの宇宙軍の実情。しかし、現在軍は激動の時代を迎えつつある。なにしろ、長年続いてきたトップレスVS宇宙怪獣という図式が大きく崩れたのだから。宇宙怪獣と言われてきた存在は、実は味方……というより同じ帝国宇宙軍の所属艦船(?)だった。では、宇宙軍の戦うべき敵とは誰になるのだろう。敵の居ない軍隊など、存在意義がない。宇宙怪獣と戦う必要が無くなったいま、戦うべきなのは人類の仇敵・変動重力源。しかし、あのトップレス部隊すら粉砕した戦闘力に対して、新型のララ級も太刀打ちできない可能性が高い。もっともトップレスがいなくなれば、宇宙怪獣ことバスター軍団は太陽系内に入らず、近寄ってくる変動重力源を退治するという本来の仕事に専念するはず。だとすると、宇宙軍の次なる敵はトップレス=子供たちになってしまうのだろうか?
宇宙軍&人類の縁の下の力持ち
宇宙の海を行く宇宙軍の主力兵器は、宇宙戦艦。しかし、トップ世界には、もう一つ宇宙軍に切ろうとしても切り離せないマシンがある。前作『トップ1』では序盤のメイン兵器として活躍し、今回の『トップ2』においても1話から登場している「マシン兵器」である!
と言ってもあまりいい活躍の場は与えられていない。ノノにイタズラしているところとか、宇宙怪獣に歯が立たないところとか、後は3話で宇宙空間に作業をするシーンとか……。しかし、このマシン兵器が無ければ、宇宙軍の行動もままならぬという、縁の下の力持ち的な優れた機械なのである。現在本編内に登場しているマシン兵器は一機種のみ。マーシャンズSANN社のEVO-3という機体である。
宇宙用のEVO-4(通称)。無重力空間においても 高い機動力を持っており、空間格闘戦ができるほど。 もっとも、この時に中に乗っていたのは、チコとノノでしたが
サン社は元々地球に本社を置く自転車、紡績機メーカー。本格入植初期にマーシャンズSANN社として火星に進出、建設重機メーカーとして開拓に協力している。EVO-3の全高は9メートル前後(アクチュエーターの伸縮や、使用場所の装備・重力条件によって変動有り)。巨大というよりも頭でっかちに見えるボディに、ちんまりとした手足が付いており、かわいいとかユーモラスといわれている。そんなファンシーな外見にも関わらず、このEVO-3は評価が高い傑作機である。サン社はマシン兵器開発は初めてながら、生存性の高いコアコクピットと頑丈さが評価され火星保安庁のトライアルで勝利、その後、火星警戒管制軍をはじめとする一部宇宙軍にも採用されはじめている。宇宙軍採用型はEVO-3S-1a/U1(通称EVO-4)という型番。
このマシン兵器はそのトップヘビーな機体にもかかわらず、重力下でも無重力状況でも自在に動けるバランサー。固定武装は頭部の90ミリ機関砲のみだが、オプションとして様々な銃器が使用可能。もちろんトーチなどの工具も自在に操るという抜群の操作性。そして何より、操縦が容易という取り回しの良さ!ハンドルをちょいちょいと動かすだけで、人が着ている服を破かぬように摘むなんてことまでできるのだ。ここまで便利なメカとなれば、普及しない訳がない。保安庁や軍だけでなく、民間の工事用など、似たような人型マシンが広く普及している。その普及率がどのくらいかというと……火星にマシン兵器相手のバーを建てて、十分経営が成り立ってしまうぐらい。もっとも、宇宙軍においてマシン兵器が戦力として期待されている訳ではなく、いわば「小回りの利く小型艇」程度の位置づけだったりする。これも敵が宇宙怪獣だから火力と戦闘速度が足りないだけで、相手にするのが人間だったなら十分なまでに強力な兵器である。まかり間違っても、このマシン兵器たちが人間やトップレスの子供たちを撃つところなどは、見たくないが……。
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