【映画クレヨンしんちゃんなんでも図鑑】第20回「時⾬院時常」[しんちゃん通信]
1993年に上映が始まった『映画クレヨンしんちゃん』は、今年30周年! これまでDVDでのみ発売されてきた旧作映画19作品のブルーレイ化プロジェクトが始動! 2022年12月から約1年間をかけて隔月で全19作を発売予定です。「映画クレヨンしんちゃんなんでも図鑑」第20回は、映画クレヨンしんちゃん 第15作『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!』(ブルーレイ8月30日発売)から、U・N・T・I(Unidentified Nature Team Inspection/国際宇宙監視センター、通称ウンツィ)の長官を務める男「時⾬院時常」を紹介!
※紹介文には本編のネタバレを含みます。
【映画クレヨンしんちゃん 第15作】
映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 歌うケツだけ爆弾!
時⾬院時常
時雨院時常は、U・N・T・I(Unidentified Nature Team Inspection/国際宇宙監視センター、通称ウンツィ)の長官を務める男。常に論理的、かつ冷静沈着に行動し、立案した計画を遂行するため1分1秒にこだわり続ける。巨大な組織を統率するカリスマ性と高い戦闘力も併せ持つ。野原一家にとって敵役にあたるのだが、“悪役”だったかどうかは評価が分かれるところだ。
U・N・T・Iの任務は、宇宙からやってくる侵入者と侵入物を監視し、地球の平和と安全を守ること。地球を破壊できるほどの威力を持つ「ケツだけ爆弾」を発見したら、何よりも優先して迅速かつ適切に処理を行わなければいけない。
さっそく爆弾をロケットで射出する計画を立てた時雨院は、野原一家とコンタクトを取る。当初はシロから爆弾を取り外そうとするが失敗。すぐさま「B計画」に移行してシロの譲渡を申し出る。それなりの報酬を用意した上で「65億8462万1764人の命」と引き換えにシロを差し出すよう求めるのだ。
時雨院の言っていることは、一応筋が通っている。実際、ひろしとみさえは時雨院の言う通り、しんのすけにシロを差し出すよう説得しようとした。しかし、シロを連れ去られしまったことに反発するしんのすけを見て、やれることをすべてやりきろうと一致団結する。
彼は世界征服などの野望を果たそうとしたり、私利私欲を満たそうとしたりしたわけではない。自分の任務を忠実に遂行しようとしただけである。しかし、判断の早さは効率を上げるが、一方で人の気持ちを踏みにじることもある。時雨院がシロを家族だと考える野原一家の気持ちをどこまで尊重していたかは疑問だ。シロを商品券と交換で引き取ろうとしたり、ロケット打ち上げの際の傲岸不遜な態度を見るにつけ、U・N・T・Iが信条として掲げていた「LOVE&PEACE」の「LOVE」の部分がおざなりになっていたように見える。
どんなに崇高な目的と高い能力を持っていたとしても、計画を遂行することと効率ばかり重視して、人の気持ちを理解することができないどころか踏みにじってしまうのならば、意味がないどころか害悪になりかねない。結局、時雨院はしんのすけとシロの救出に成功したひろしに殴り飛ばされ、ウンコを漏らす醜態をさらした。時雨院のその後は描かれていないが、人の気持ちを理解した上でU・N・T・Iの職務を遂行できる人物になってもらいたいものだ。
時雨院時常を演じたのは、ゲスト声優の京本政樹。ひろしが京本の当たり役『必殺』シリーズの組紐屋の竜を名乗る場面があるが、ムトウユージ監督は『スケバン刑事Ⅲ 風間三姉妹の逆襲』での悪役・関根蔵人のイメージでキャスティングしたと明かしている。このときの役柄も国家機関・青年治安局の若きエリート局長という役柄だった。ムトウ監督が最後にウンコを漏らす役柄だと伝えると、これまで二枚目的な役柄が多かった京本は驚愕したという。後に自身のラジオ番組『京本政樹のおもしろウォーカー』(ラジオ日本)で「わが芸能生活においても非常に記念になる映画になった」と語っていた。
また、『爆発!温泉わくわく大決戦』の丹波哲郎のように重要な役を演じたゲスト声優はいたものの、これほどまでストーリーに大きくかかわった上、自ら話を進めていく役は京本が初めてだった(『3分ポッキリ大進撃』の村井國夫は声優としての実績も豊富なのでここでは除外する)。本作以降、『ユメミーワールド大突撃』の安田顕、『もののけニンジャ珍風伝』の川栄李奈など、ゲスト声優が重要な役を演じることが増えていった。
参考『クレヨンしんちゃん大全 2020年増補版』(双葉社)
<発売情報>
Blu-ray
2023年8月30日発売
税込価格:¥5,280
品番:BCXA-1800
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©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2007